
プライバシー規制の強化やサードパーティcookieの制限が進む中で、個人情報を保護しながら計測精度を維持する仕組みとして拡張コンバージョンが注目されています。
この仕組みは顧客がサイトで入力したデータを安全にハッシュ化して照合し、計測の欠損を補完するため、従来より正確な結果を得やすいのが特徴です。
またAIや機械学習を活用した最適化が進む広告プラットフォームでは、より質の高いデータを提供することが重要になります。
本記事では基本の考え方から設定方法までを順序立てて紹介し、初めての方でも内容を分かりやすく把握できるようにまとめています。
Google広告の拡張コンバージョンとは?背景と仕組み

拡張コンバージョンの基本概要
拡張コンバージョンは広告主が保有するファーストパーティデータを安全にハッシュ処理してGoogleに送信し、計測の欠損を補完する仕組みです。
サードパーティcookieの利用制限や各国のプライバシー規制が強まる中で、従来の方法では顧客の行動を正確に把握しにくくなっており、この機能はその課題を緩和する役割を担います。
Google Adsは機械学習を使ってデータを照合し、どの広告がどのアクションにつながったのかを判断するため、より現実に近い計測が可能になります。
匿名化と暗号化を前提に処理されるため個人情報を直接扱うことなく活用でき、メディア横断の配信が増える中でも安定した計測がしやすくなります。
拡張コンバージョンの仕組み
拡張コンバージョンは次の流れで処理されます。
- データ収集(ファーストパーティデータの取得)
ユーザーがフォーム送信や購入時に入力した氏名や住所の一部などを広告主が取得し、ハッシュ化してサーバーまたはタグ経由でGoogleに送信します。 - データマッチング(匿名化された照合プロセス)
Googleが受け取ったデータを自社保有データと安全な手法で照合し、広告接触者とコンバージョン発生者の一致を確認します。 - コンバージョン計測(欠損データの補完)
一致した情報を元に計測を行い、cookieが使えない環境でも計測が途切れにくくなります。 - レポート作成(広告効果の可視化)
Google Adsの管理画面で結果が反映され、配信の状態やパフォーマンスの動きを把握しやすくなります。
この仕組みによりデバイスをまたぐ計測も強化され、各プラットフォーム広告の最適化ロジックに質の高いデータを提供できます。
拡張コンバージョンのメリット
- プライバシー保護
データはハッシュ化処理されるため匿名性が維持され、法律面で求められる同意管理にも対応しやすくなります。 - 精度の向上
cookieが利用できないブラウザ(例:Chromeの制限強化環境やSafari)でも計測の欠損が発生しにくくなり、正確性が高まります。 - 効果的な広告配信
Google Adsのaiがより良いデータを取得できるため、自動入札や最適化の精度が上り、多様なメディアやディスプレイ、動画広告の運用型広告にも良い影響が出やすくなります。
デメリットと注意点
- 導入の手間
GTMの設定やデータ連携が必要で、手動の調整や改修が生じる場合があり、担当者は手順を理解した上で進める必要があります。 - データの信頼性
入力情報に誤りが多いと照合精度が下がり、期待する計測結果を得にくくなるため、顧客から取得する情報の品質を保つことが重要になります。 - 同意管理への配慮
取得したデータを広告用途に利用するため、ユーザーが何に同意したのかを明確にし、プライバシーポリシーの内容も適切に整える必要があります。 - 他媒体との仕様差
Yahoo!広告やmeta、LINE、Microsoft広告、Pinterest Adsなどは同様の仕組みを提供していますが、形式やAPIの要件が異なるため、同じ設定だと思い込まないことが大切です。
拡張コンバージョンの導入方法と設定手順

拡張コンバージョンの初期設定
拡張コンバージョンを導入するために、以下の準備が必要です。
- Googleアカウント
Google広告へログインするために必要 - Googleタグマネージャー(GTM)
タグ管理ツール - ファーストパーティデータ
メールアドレス・電話番号など、広告主が取得したデータ
準備が整ったら、設定作業に進みます。
拡張コンバージョンの設定手順
拡張コンバージョンを設定する手順は以下の通りです。
- コンバージョントラッキングの設定
Google広告にログイン - 左メニュー → 「ツールと設定」 → 「コンバージョン」 を選択
- 「+コンバージョンアクション」 をクリック
「ウェブサイト」を選択し、目的(購入/問い合わせなど)を設定 - 拡張コンバージョンの有効化
作成したコンバージョンアクションの詳細画面を開く - 「拡張コンバージョンを有効にする」 をオン
- 送信するファーストパーティデータ(メール、電話番号 など)を指定
- Googleタグマネージャー(GTM)の設定
GTMにログインし、コンテナを作成 - 「タグ」 → 「新しいタグ」 をクリック
タグの種類で 「Google広告のコンバージョントラッキング」 を選択 - コンバージョンID・コンバージョンラベルを入力
変数にファーストパーティデータを設定(メール・電話番号等) - タグの設置と公開
トリガーを設定
例:購入完了ページの表示時
プレビューモードで動作確認 - 問題なければ 「公開」 をクリックして反映
設定中に注意すべきポイント
拡張コンバージョンを設定する際に注意すべきポイントは以下の通りです。
- プライバシー保護
データはハッシュ化され、匿名化して送信 - タグのテスト
GTMのプレビューモードを必ず使用 - 定期的なメンテナンス
サイト更新・データ項目追加などに合わせて見直しが必要
従来のコンバージョン計測方法との違い

従来のコンバージョン計測方法
従来は主にcookieを使ってユーザーのページ閲覧やクリックを追跡していました。
ブラウザに保存されたcookieでセッションやページビューを把握し、広告クリックからの流れを測定していました。
この方法の特徴は次のとおりです。
- クッキーの使用
ブラウザベースで行動を追跡するためサードパーティcookieの制限やchromeの仕様変更に影響を受けやすい点が懸念されます。 - ページビュー中心の計測
ページの閲覧やイベントを基に判断するため、購入やフォーム送信といった具体的な顧客の行動を細かく補完するのが難しい場合があります。 - 単一データポイント依存
一度の訪問やクリック情報に依存するため、データ欠損や重複が多いと計測精度が下がります。
拡張コンバージョンとの違い
拡張コンバージョンはファーストパーティデータをハッシュ化してGoogle Adsや関連プラットフォームに送信し、照合することで欠損を補完します。
これによりcookieだけでは把握できない顧客の行動やデバイスをまたいだ計測がしやすくなります。
違いを整理すると次のようになります。
- データ収集方法の差
従来はcookieに依存して追跡していましたが、拡張コンバージョンではメールや電話番号などファーストパーティデータをサーバーまたはGTM経由でハッシュ送信し、APIで照合します。 - プライバシーと同意の扱い
従来はcookie同意が中心でしたが、拡張コンバージョンでは個人情報の取り扱いと同意管理がより重要になり、privacyや法律の確認が必要です。 - 精度と欠損の補完
拡張コンバージョンは機械学習やaiを活用する配信ロジックに質の高いデータを渡せるため、ディスプレイや動画など多様なメディアでの計測精度が向上します。
どちらの方法が適しているか?
選択は目的や運用リソースによって変わります。以下を参考に検討してください。
拡張コンバージョンが向く場合
データの正確性を重視し、api連携やサーバー側送信、改修を行う体制があり、顧客の個人情報の取り扱いと同意取得を法務と合わせて把握できる場合に適しています。
従来の方法が向く場合
短期間で開始したい、手動での対応や低コストでの運用を優先する場合は従来のcookieベースでの計測が実務上便利です。
補足として、yahoo!やmeta、LINE、Microsoft、Pinterestなど他のプラットフォームは仕様や同意フローが異なるため同じ設定で運用できない点にご注意ください。
Googleタグマネージャー(GTM)を使った拡張コンバージョンの実装方法

Googleタグマネージャーはタグの一元管理と迅速な改修が可能なツールで、拡張コンバージョンの導入にはほぼ必須です。
サーバー側送信やクライアント側のタグのどちらを採るかで運用や改修の流れが変わるため、事前に担当者と要件を合わせてください。
GTM導入前に確認する点
- 目的と目標
どのイベントやリードを計測するかを明確にしてください。 - 同意とプライバシー
個人情報を送信するため同意管理の仕組みを整え、法務と合わせて把握してください。 - 送信方式
サーバーサイド送信かタグ(クライアント)経由かを決めてください。
サーバー側はcookie欠損時の補完や改修の柔軟性で有利です。 - データ品質
氏名やメール、住所の取得設計を見直し、欠損や誤入力が多い場合はフォームやプルダウンを改修してください。
実装手順(GTM中心の具体策)
- Googleタグマネージャーにアクセスし、無料アカウントを作成
- コンテナを作成する。
ページに設置するコードは<head>と<body>直後へ入れ、表示速度や Chrome の動作に配慮する。 - データレイヤーを設計し、顧客情報の変数(メール、電話、氏名の一部、住所の一部)を定義する。
取得した個人情報は送信前にハッシュ化する設計とし、privacy 要件に適合させる。 - Google Ads のコンバージョントラッキングタグを作成し、user_data 用の変数を紐づける。
- サーバーサイドで送信する場合は API 連携(api)と照合ロジックを設計し、ハッシュ方式や送信頻度の要件を確認する。
- トリガーを購入完了やフォーム送信などのイベントに割り当てる。
イベント側で発生する状態や形式(フォームの遷移、イベントID など)を明確化しておくことで診断が容易になる。 - プレビューモードで動作確認と診断を行い、欠損や照合エラーが発生していないか確認する。
テスト時は cookie やサードパーティ制限の有無を切り替え、実際の環境に近い状態で検証する。 - 問題がなければ公開し、公開後は定期的にマッチ率や欠損率を確認して調整する。
マッチ率の低下が見られる場合は、顧客データの獲得フローや入力項目の見直し、手動でのデータクリーニングを検討する。
サーバーサイドGTMを検討する理由と利点
- 欠損補完の強化
cookieが制限される環境でも安定してデータ送信できる可能性があります。 - 改修負担の低減
クライアント側のコード変更を最小化でき、運用型広告や配信プラットフォームの変更時に便利です。 - セキュリティと法務対応
個人情報の取り扱いをサーバー側で管理しやすく、privacyや法律の要件に合わせやすくなります。
まとめ
拡張コンバージョンはファーストパーティデータをハッシュ化して送信することでcookie欠損を補完し、計測の精度を高める仕組みです。
同意管理とプライバシー要件を優先し、GTMやサーバーサイド送信の設計を整えてください。
データレイヤーでuser_dataを明確に定義し、購入完了やフォーム送信をトリガーに設定すると診断がしやすくなります。
プレビューでマッチ率や欠損率を定期的に確認し、低下が見られる場合はフォーム改修や手動でのデータクリーニングを行うことも重要です。
Google Adsの機械学習は質の高いデータで最も効果を発揮しますので、取得項目の見直しや取得フローの改善に注力してください。
他プラットフォーム(yahoo!、meta、LINE等)は仕様やAPI、同意フローが異なるため、それぞれ要件を確認しながら運用体制を整えましょう。
Google広告のトラッキングテンプレート設定方法とURLパラメータの解説については下記で詳しく紹介しています。

Google広告タグの設定方法については下記で詳しく紹介しています。




